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クンダリニー覚醒行法を捜す
クンダリニー覚醒を果たすには、具体的にどうすれば良いのかについて、ヨーガ経典から探ってみよう(以下紹介する経典の日本語訳は、宮本久義氏の試訳による)。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー
1・26 右足を左腿のつけ根にのせ、左足を〔右〕ひざの外側に交差しておき、〔手でそれぞれ
逆のつま先を〕つかんで、体をねじるのが、マツヤナータ師の説いた体位である。
1・27 マツヤェーンドラの体位は、修練することにより、腹部を輝かせ〔=消化力を増強させ〕
恐ろしい病魔の軍団をうち破る武器となり、人々のクンダリニーを覚醒し、月を安定さ
せる。
これはヨーガではポピュラーな身体をひねるポーズだが、このポーズだけでクンダリニー覚醒には至らないだろう。それよりはクンダリニー覚醒への準備と考えて、健全な身体を作り上げるために、実践するべきものだと思う。
スィッダ・アーサナ(達人坐)によって、7万2千本のナーディー(意識路)の汚れが清掃される、と書いてあり、さらにアートマン(真我)を思念して、食を節して12年間スィッダ・アーサナを行じたら、ヨーガの究極の目的を達成する、となっている。
スィッダ・アーサナというのは、クンダリニー覚醒にはかなり助けになる坐法である。しかし、これもスィッダ・アーサナが直接クンダリニー覚醒にはつながらない。だが、具体的に修行年数や回数を示して、効果を記述するというのは、経典には多くみられる。
バストリカーというクンバカ(止息法)が、スシュムナー・ナーディー(中央意識路)の三つの結節(グランティ)を破壊する、とあり、ケーヴァラ・クンバカ(単独の保息)によってクンダリニーが覚醒する、と書いてある。
バストリカーで結節が破壊される可能性はある。その場合、ハタ・ヨーガの各種行法を実践する内の一つとして、バストリカーを行じていれば可能性は高まるだろうが、バストリカーだけを実践しても、結節の破壊にはつながらないと考えた方がいい。
ブジャンガ・アーサナ(蛇のポーズ)にもクンダリニーが覚醒するという記述がなされているが、本当にクンダリニーが覚醒する技法には、その通りの名前が付けられているだろうと、わたしは考えている。つまり、ブジャンガ・アーサナ(蛇のポーズ)も内容的には、クンダリニー覚醒の可能性を秘めていると思う。
いくつかのヨーガ経典をチェックしてみて、確実にクンダリニー覚醒を果たせると思える行法が、一つだけある。それが「シャクティチャーラニー・ムドラー」である。まさにシャクティ(=クンダリニー)をチャーラニー(=動かすこと)という名前が示す通りに、確かにクンダリニー覚醒技法だというのが、わたしの実践経験から出された結論である。
ヨーガ経典のシャクティチャーラニー・ムドラー
それでは経典の中で、そのシャクティチャーラニー・ムドラーが記述されている部分を書き出してみよう。現実的にクンダリニー覚醒と関係のある部分をピックアップする。
ゲーランダ・サンヒター
3・49 ムーラーダーラ〔チャクラ〕には、個人の本体のシャクティで、最高の神格であるクンダ
リーが、3巻き半のとぐろを巻いた蛇の姿で臥している。
3・50 それ(クンダリー)が体の中で眠っているあいだは、生命体はけものの如くであって、
何千万ものヨーガを修練しても、知は生じない。
3・51 扉を鍵で力を込めてこじ開けるように、クンダリニーを覚醒させることによって、ブラフ
マンの門をうち破るべし。
3・54 灰を体に塗り、スィッダ・アーサナを修すべし。両方の鼻〔孔〕からプラーナ気を吸い込
みアパーナ気にしっかりと結びつけるべし。
3・55 スシュムナー気道の中に気が入り、堅固に輝くようになるまで、アシュヴィニー・ムド
ラーで秘所(肛門)をゆっくりと締めるべし。
3・59 このムドラーは最高の秘密にすべきものであり、老と死をうちほろぼすものである。
それゆえ、成就を願うヨーガ行者たちによって修練がなされるべきである。
ここで注目すべきは「アシュヴィニー・ムドラーで秘所(肛門)をゆっくりと締めるべし」という部分である。アシュヴィニー・ムドラーという行法は基本的には肛門を締め付ける技法である。つまりムーラバンダとほぼ同じ行法である。また、プラーナ気とアパーナ気をつなぐというのもキーワードである。「成就を願うヨーガ行者たちによって修練がなされるべき」という部分も、見逃せない。重要な行法になればなるほど、いいかげんな気持ちで実践するべきでないからである。本当にクンダリニー覚醒を願うヨーガ行者だけに許された行法が「シャクティチャーラニー・ムドラー」なのだ。だから「最高の秘密にすべきもの」と書いてあるのだ。
次に、『シヴァ・サンヒター』からピックアップしてみよう。
シヴァ・サンヒター
4・53 賢者(=ヨーガ行者)は、アーダーラ蓮華(=チャクラ)でぐっすりと眠っているクンダリ
ーを、アパーナ気にのせて力強く引きずり出し、動き出させるべし。このムドラーがあ
らゆる力を授けてくれるシャクティ・チャーラナである。
4・54 毎日このようにシャクティ・チャーラナを修する者には、寿命の増長と病気の消滅が
ある。
4・55 眠りをふり捨てて、蛇(=クンダリー)は自ら上昇する。それゆえ、成就を欲するヨーガ
行者は修練をなすべし。
4・56 師の助言に従って最高のシャクティ・チャーラナを修練する者には、微細になる力など
を授けるヴィグラハ・スィッディが〔得られる〕。そのような者に、どこから死の恐れがこ
ようか。
4・57 2ムフールタのあいだ、規定通りにシャクティ・チャーラナを努力して行ずる者には、遠
からず成就が〔得られる〕。ヨーガ行者は適切な坐法によって、シャクティ・チャーラナ
をなすべし。
4・58 これが十のムドラーで、過去にもなかったし、未来にも〔匹敵するものは〕ないであろ
う。一つ一つ修練することにより、成就が得られ、必ず成就者となる。
この一連の記述で見られるのが「恐ろしい病魔の軍団をうち破る」「老と死をうちほろぼす」「寿命の増長と病気の消滅」という項目である。シャクティチャーラニー・ムドラーは解脱を目指して実践するのだが、その前提として健康で若さを保ち、死を克服する必要がある。また、「自ら上昇する」という表現には、クンダリニー覚醒の本質的内容が盛り込まれているのが感じられる。
ヨーガ経典のムーラバンダ
シャクティ(=クンダリニー)を目覚めさせて、スシュムナー・ナーディー(中央意識路)を上昇させるのが、シャクティチャーラニー・ムドラーなのは確かだが、その具体的な行法となると、この記述だけでは納得できる答えがでない。
プラーナとアパーナが合一し、クンダリニーが目覚めて「自ら上昇する」行法が、具体的に書いてあればいいということになる。
そこで経典をチェックすると、そのものずばりの内容が書いてあるのが「ムーラバンダ」である。まず『シヴァ・サンヒター』には、次のように書いてある。
シヴァ・サンヒター
4・41 足元(=かかと)で肛門をしっかりと押して、力強くアパーナ気を引き上げ、徐々に上
昇させるべし。これがムーラバンダと説かれるもので、老・死を滅するものである。
4・43 ヨーニ・ムドラーが成就したならば、地上で何が成就されないことがあろうか。このバ
ンダの恩恵により、ヨーガ行者はパドマ・アーサナを組んだまま、倦(う)むことなく、
大地を離れ、空中を行くことができる。
この記述でも、ヨーガを実践し続けているわたしにはよく理解できるが、一般的にはムーラバンダとして見るならば、説明不足の感がある。そこで、次に『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』の方をチェックしてみよう。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー
3・61 かかとで会陰部を押して、アパーナ気を上方へ引き上げるよう、肛門を引き締めるべ
し。〔これが〕ムーラバンダとよばれる。
3・62 〔肛門を〕引き締めることによって、下方へ向かうアパーナ気を力を込めて上方へ向
かわせる。これをヨーガ行者たちはムーラバンダと呼ぶ。
3・63 肛門をかかとで押して、〔アパーナ気が〕上方へ向かうまで、力を込めてくり返し気を
引き締めるべし。
3・64 ムーラバンダによって、プラーナ気とアパーナ気は、ナーダとビンドゥと合一し、ヨーガ
成就がもたらされる。これについては疑いはない。
3・65 常にムーラバンダ〔を修練すること〕によって、アパーナ気とプラーナ気が合一し、大小
便が減少し、年老いた者でさえも若者になる。
3・66 アパーナ気が上昇して火輪(ヴァフニ・マンダラ・腹部にあるとされる消化力の火)に
達すると、アパーナ気にあおられて火炎は長くなる。
3・67 さらに、火とアパーナ気が、熱い性質をもつプラーナ気に達すると、それによって、体
内に生じた火は盛んに光り輝く。
3・68 その結果、眠っていたクンダリニーは熱せられて、覚醒させられる。あたかも棒で叩
かれた蛇がシューッという音をたて、直立するように。
3・69 それから、〔蛇が〕穴に入るように、ブラフマンの気道(=スシュムナー気道)の中に
入る。それゆえ、ヨーガ行者たちは常にいつでもムーラバンダを修すべきである。
こちらの方は、かなり具体的な行法が書かれている。まず、基本的に肛門を収縮するということが明示されている。「アパーナ気が上方へ向かうまで、力を込めてくり返し気を引き締めるべし」とあるのを見逃さなければ、ムーラバンダを100万回実践しようという気になるはずだ。
そして、プラーナとアパーナがムーラバンダで合一するとされている。「その結果、眠っていたクンダリニーは熱せられて、覚醒させられる」というところも重要だ。つまり、ムーラバンダをくり返し実践していると、覚醒するのではなく「覚醒させられる」という点に注目すべきだ。そして、スシュムナーを上昇するということまで、しっかりと書かれている。
これだけはっきりと書いてあれば、経典でシャクティチャーラニー・ムドラーの技法部分がぼかして示されていたが、明白になる。シャクティチャーラニー・ムドラーは、明らかにムーラバンダの技法を使うという結論を引き出すことができる。
そこまで分かれば、後は実践方法を極めるだけとなる。経典の記述だけでは、細かな技法は全然つかめない。わたしは、その経典の記述から、試行錯誤してシャクティチャーラニー・ムドラーの技法を完成させた。その技法を可能な限り本書で公開しようと思う。
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